2010年03月04日

じっちゃんの算数

じっちゃんの算数教室

1..1から20まで足すと?(自然数の和)
2.1+2+4+8+…  (倍加算)
3.36×34=     (同側和十法)
4.インドの掛算     (両首一法) 
5.1.03×0.98=   (近一乗除法)
6.8×6=8×5=8×4(減一・帰一)
7.3456÷8=    (増減一法)
8.64の平方根は?   (めの子平方:引去法)
9.引残法
10.47×32=     (2倍法・エジプトのかけ算)
11.余数乗法
12.指算
13.平方の計算
14.掛けて割る算
15.お釣りの計算
16.9で割れる?     (2〜9の整除性)
17.÷3000、÷999 の計算  
18.1÷0.98 の計算
19.カラス算

1.1から20まで足すと?(自然数の和・等差級数の和)
  例1  1+2+3+……+18+19+20はいくらになるか?
   計算式
(20×21)÷2=420÷2=210        答  210
  例2  1から36までの和はいくらか
   計算式
    (36×37)÷2=1332÷2=666        答  666   
  例3  1から100までの和はいくらか 
   計算式
    (100×101)÷2=10100÷2=5050      答 5050
 
  説明 1から20まで足す場合
  上に1から20まで書きます    1+ 2+ 3+……+18+19+20
  下には逆に 20から1まで書いて 20+19+18+……+ 3+ 2+ 1
上と下を足すと         21 21 21 21 21 21
となって  21が20個できるので、全部たすと 21×20=420 になります。
  この420は1〜20の2つ分ですから、2で割ると、答の210がでます。

  拡大して、等差級数の和を求める公式は(初項+末項)×項数÷2です。
  例4 51〜60 の和を求める。
     初項=51  末項=60  項数=60−51+1=10 
     (51+60)×(60−51+1)=111×10÷2=555   答  555

◎ エピソード
ドイツの大数学者 ガウス(Karl Friedrich Gaugg 1777~1855)が9歳のときでした。
ドイツのブラウンシュワイの小学校でのできごとです。
算数の時間に担任のビュットネル先生が「1から2,3,4と40までたした答をだしなさい」という問題をだしました。
すると、すぐに手をあげて「答は820です」とこたえたのです。そして前のような説明をして、先生を驚かせました。これが子供時代のガウスの有名な逸話です。

2.1+2+4+8+……(倍加算)
  ある数からはじめて、2倍、その2倍、また2倍といくつか作って、その合計をだす
という、足し算の練習です。
 例1 はじめの数を1として、10個足すといくらになるか。 
     1+2+4+8+16+32+64+128+256+512=1023(*)

答の簡単な出し方  
最後の数×2−はじめの数
     512×2−1=1023

  例2 はじめの数:3 個数が10の答はいくらか。
     3+6+12+24+48+96+192+384+768+1536=3069
答の出し方
     @ 1536×2−3=3069
     A 個数が10の場合  3×1023(*)=3069 (例1の3倍だから) 

  例3  はじめの数:86  個数が10のときの答をだしなさい。
     86+172+344+688+1376+2752+5504+11008+22016+44032=87978
   答の出し方
     @ 44032×2−86=87978 
     A 86×1023(*)=87978

3.36×34= の速算法(同側和十法)
  2桁どうしの計算で、「インドの計算」といって話題になる多いが、日本でも古くから使われていた。

 @ 十位が同じで、一位を合わせると十になる場合(同篇和十)
             36
           × 34
  1224    
(3×3+3)→  1224 ←(6×4)…(3×3+3)×100+6×4=1224
 A 一位が同じで、十位を合わせると十になる場合(同旁和十)
              87
            × 27
  2349
(8×2+7)→ 2349 ←(7×7)…(8×2+7)×100+7×7=2349
 Bかけられる数が同数字で、かける数の一位と十位とを合わせると十になる数の場合(同冠和十)
             33
×  46 
            1518 
(3×4+3)→ 1518 ←(3×6)…(3×4+3)×100+3×6=1518
 Cかけられる数の一位と十位を合わせると十になり、かける数が同数字の場合
  Bの、かける数とかけられる数が、入れ替わっている場合(同沓和十)
37
× 66 
2442
(3×6+6)→ 2442 ←(7×6)…(3×6+6)×100+7×6=2442
◎ これを拡大すると、つぎのように発展します。
BD4
×  BD6 
126024   (35×35+35)×100+4×6=126024

C83
   ×  C17   
201411   (4×4+4)×10000+83×17=201411

HG74
×  HG26  
97021924   (98×98+98)×10000+74×26=97021924
実用的ではありませんが、数楽の一つとしてためしてみてください。

4.インドの掛け算(2けた×2けた)
@ 十位が1のとき(両首一法)
  例 1. 17×13=221 
         17
×  13
        221 (17+3)×10+7×3=221

  例 2. 18×16=288 
         18
  ×  16
    240     
         48            

    288 (18+6)×10+8×6=288  

 A 十位が同じ数のとき(中国では、首位相同法)
  例 3. 28×26=728
          28
       ×  26 
         680 ←(28+6)×20
          48 ←(8×6)
         728 (28+6)×20+8×6=728

  例 4. 73×74=5402
          73
       ×  74
        5390 ←(73+4)×70
          12 ←(3×4)
        5402 (73+4)×70+3×4

  例 5. 103×104=10712
         103
       × 104
10700 ←(103+4)×100
   12 ←(3×4)
10712 (103+4)×100+3×4=10712

 B 一位が同じ数のとき(中国では、末位相同法)
  例 6. 42×32=1344
          42
       ×  32
        1200 ←(40×30)
         144 ←(42+30)×2
        1344  40×30+(42+30)2=1344

  例 7. 39×59=
          39
       ×  59
        1500 ←30×50
         801 ←(39+50)×9
        2301  30×50+(39+50)×9=2301

5.1に近い数どうしの計算(近一乗・除法)
 @ 1に近い数どうしの掛算
  *計算方法:2つの数をたして1を引く
    1.03×1.02=1.03+1.02―1=1.05(1.0506)
    1.04×0.98=1.04+0.98―1=1.02(1.0192)
    0.98×0.97=0.98+0.97―1=0.95(0.9506) 

 A 1に近い数どうしの割算
  *計算方法:1をたして割る数を引く
    1.03÷1.02=1.03+1−1.02≒1.01(1.0098…)
    1.02÷1.03=1.02+1−1.03≒0.99(0.9902…)
    1.04÷0.98=1.04+1−0.98≒1.06(1.0612…)
    0.98÷1.02=0.98+1−1.02≒0.96(0.9607…)
    0.98÷0.96=0.98+1−0.96≒1.02(1.0208…)
    0.96÷0.98=0・96+1−0.98≒0.98(0.9795…)     
       
6.8×6=8×5=8×4=(減一・帰一乗法)
   * 8×6=48  です
   * 8+8×5= (8に8の5倍をたす)
     ソロバンで計算すると
              8    
             40 ←(8×5)
             48
   * 8×10−8×4= (8の10倍から、8の4倍を引く)
             80
            −32 ←(8×4)
             48 

7.「九九」を使用しないわり算(増成一法)
  中国では、ソロバンが発生するまで「籌(ちゅう)」とよばれる「算木」で計算が行われていたが、しかし、けっこう手間がかかるので、いろいろな工夫をいろいろな方法が 考えられながら発達した。
  発達の一つの段階として「増成一法」といって、つぎのような方法がおこなわれて  いたが、特徴は加減のみで全く「九九」を使わないでする除法である。

  例  3456÷8=
   *3   4   5   6   8で割る(*は途中のソロバン面である)   
       +2           8と10との差=2(補数という)
       +2           @首位の3を仮の答として、つぎの位に補数
       +2            の2を3回たす
   *3  10   5   6
       −8           A10から除数の8を引く
   +1               B8が1回引けたので、上の位に1をたす  
   *4   2   5   6   C4は確定する
           +2       Dつぎの2を仮の答として、つぎの位に補数
           +2        の2を2回たす 
   *4   2   9   6   
           −8       E9から除数の8を引く
       +1           F8が1回引けたので、上の位に1をたす
   *4   3   1   6   G4と3が確定する 
                    Hつぎの1を仮の答として、つぎの位に補数
               +2    2を1回たす
   *4   3   1   8
               −8   I8から除数の8を引いて上の位に1をたす
   *4   3   2        答は 432 である 
                        ・  ・  ・  ・
  この計算はソロバンでは、定位点にあわせて  3・・4・・5・・6 と布数して 
 計算すれば簡単にできる。
  この計算が発展して、「割り声(割り算の九九)」がうまれた。なお、中国では、なるべく考えずに答を算出する工夫をした。

8.64の平方根はいくらか(めの子平法・引き去り法)
       @ A B C D  E  F  G
    64−1−3−5−7−9−11−13−15=0 
と奇数を8回引けば0になるので、64の平方根は 8 である。
  
9.引き残し法
    64−1−1−2−2−3−3−4−4−5−5−6−6−7−7=8

10. 47×32=1504(2掛け乗・除法・エジプトの掛算・割算)
        47   32         47    1
        94   16         94    2
       188    8        188    4
       376    4        376    8

       752    2        752   16

      1504    1       1504   32

   86×53=4558

        86*  53         86    1*
       172   26        172    2
       344*  13        344    4*
       688    6        688    8
      1376*   3       1376   16* 
      2752*   1       2752   32*
*印の数の合計をすれば、      右の数を2倍ずつしていく、  
     答の 4558 が求め      32を2倍すれば 53 を
     られる。             超えるのでストップして、
     86+344+1376      53−32−16−4−1=0
+2752=4558       *印の左の数を合計すれば
                      答の 4558 が求められる。

11.余数(補数)乗法
   例1  8×6=(10−2)×(10−4)=48
      *ソロバンでは、この2と4を補数といって、8の補数は2、6の補数は4
       であるといいます。
   計算方法  (8+6)×10+2×4−100=48
   例2. 7×6=(10−3)×(10−4)=42  
    計算方法  (7+6)×10+3×4−100=42
   例3. 9×3=(10−1)×(10−7)=27
    計算方法  (9+3)×10+1×7−100=27
   例4. 4×2=(10−6)×(10−8)=8
    計算方法  (4+2)×10+6×8−100=8 

12.指でするかけ算
  前の11.を延長あいたのが、よくいわれる指算で、6,7,8,9の段どうしのかけ算である。最近までヨーロッパ(フランス・ルーマニアの農民、モルドヴァ・セルビアのジプシー・イランのクルド人などのあいだ)で使われていたらしい。
     8×6=48
    計算の手順 @5の段までの九九は覚えさせる。
          A左手の指で、親指から小指に向かって1,2,3,4、5とおりまげて、6,7,8と起こす。(3本起きている)
          B右手の指で、親指から小指に向かって1,2,3,4,5とpりまげ
           て、6と起こす。(1本起きている)
          C左右の起きている指は、1本を10と数える。(4本で40)
          D左右の曲げた指どうしかけ合わせる。(2×4=8)
          ECの数とDの数とを加えて、積とする。(40+8=48)
   *10を超えた数どうしのやり方もあるが、ここでは省きます。

13.自乗の計算
     67×67=4489         89×89=7921
    ソロバン面   67                 89            
               42                 72
               42                 72
               49                 81
            6・889              81521 
             36                  64
             4489                7921

14.かけて割る算
   ÷2=×1/2=×0.5   8÷2=8×0.5=4
   ÷3=0.3333…     9÷3=9×0.3333=2.9997≒3
   ÷4=0.25        8÷4=8×0.25=2
   ÷5=0.2        20÷5=20×0.2=4
   ÷6=0.1666…    30÷6=30×0.1666=4.998≒5
   ÷7=0.142857…  70÷7=70×0.142857=9.99999≒10
   ÷8=0.125      40÷8=40×0.125=5
   ÷9=0.1111…    90÷9=90×0.1111=9.999≒10

15. おつりの計算
  日本では、買い物で「おつり」を計算するとき、
 例えば、合計 387円 の買い物をして 500円 で支払おうとすると、
 500円―387円=113円 で、113円のお釣りをくれます。
  ところが、ヨーロッパなどを旅行して、買い物をすると、まえの例の場合だと、
   商品(387円)+1円(388円)+1円(389円)+1円(390円)
+10円(400円)+100円=500円 となって、
商品とお金を(全部で500円)くれます。この方法だと、計算をしなくとも(計算ができなくとも)もらった人も納得します。
英語では、お釣りのことを「チェンジ(交換する)」といって、同じ価値のものどうしを交換することです。そこには西洋流の合理的に納得し安心できるのです。
日本でいう「お釣り」も、商品と払ったお金が釣り合うということで、同じ意味といえます。

16. 9で割れる?(2〜9の整除性)
    任意の整数を、ある整数で割って、整数で割り切れることを整除性といいます。    
   @ 2の整除性
     偶数は2の倍数である。
   A 3の整除性
     単一数(各位格の数字を合計した数、例378 3+7+8=18と2けたになったので、さらに足しあわせて 1+8¬=9 と1けたにした数)が、3の倍数であれば、3で割り切れる。
   B 4の整除性 
     (イ)末尾の2桁が、00か4の倍数であれば、その数全体が4の倍数である。
     (ロ)偶数で、下2桁を2で割ってもその答が偶数であれば、4の倍数である。
   C 5の整除性
     一位が、0か5であれば、5の倍数でる。
   D 6の整除性,
     偶数で、単一数が3の倍数であれば、6で割り切れる。 
   E 7の整除性
* 7が一番複雑である。
     (イ)一位から、3桁ずつの群にわけて、奇数番目の群の和から、偶数番目の和を引いた差が、0か7で割れれば全体の数が7の倍数である。
        例 3,912,657,840
(840+912)−(657+003)=1,092
          092−001=91 91÷7=13 と7で割り切れるので、
          3,912,657,840は 7の倍数である。
     (ロ)1位(7位)数の1倍、2位(8位)数の3倍、3位(9位)数の2倍、
        4位(10位)数の6倍、5位(11位)数の4倍、6位(12位)数の5倍した数の和が、7で割り切れれば、全体の数は7の倍数である。
        例 3,912,657,840
         0×1+4×3+8×2+7×6+5×4+6×5+2×1+1×3+9×2+3×6=161 161÷7=23 と7で割り切れるので、
          3,912,657,840は 7の倍数である。
     (ハ)末位数の2倍をその上位から引いて、順次上位へ引いて残数が7で割り切れれば、全体の数は7の倍数である。
        例 3,912,657,840
3912657840
                    −8C 
               3912657000
                  −14F
              3912510000
                  −2@        
               3912300000
                ―6B
               3806000000
              −12E 
              3780000000           
             −16G
               21
        21は7で割りきれるので、全体の数は7の倍数である。
     (ニ)上位から1001の倍数(9009,8008,…)を引き去って、3桁になれば、777を引いて残数が7で割り切れれば、全体は7の倍数である。
        例 3,912,657,840
3912657840
   −3003
                909657840                  
               −9009    
                  8757840
                 −8008
                  749840
                  −7007
                    49140
                   −4004
                     9100
                    −9009
                      910
                    −777
                      133
           133÷7=19 と7で割れるので、全体は7の倍数である。                                  
     (ホ)3×(1位目の数)+2×(2位目の数)−1×(3位目の数)−3×(4位目の数)−2×(5位目の数)+1×(6位目の数)+3×(7位目の数)−2×(8位目の数)−1×(8位目の数)−3×(9位目の数)が、7で割り切れれば、全体の数は7の倍数である。
       例 3,912,657,840    
3×0+2×4−1×8−3×7−2×5+1×6+3×2+2×1−1×9−3×3=0+8−8−21−10+6+6+2−9−9=−35   
       −35は、7で割り切れるので、全体の数は7の倍数である。
     (へ)A+5Bが7の倍数であれば、10A+Bは7の倍数である。 
       例  329
       A=32 B=9 A+5B=32+5×9=77 は7で割り切れるので、
       32×10+5×9=77 で7で割り切れるので、
32×10+9=329 は7の倍数である。
   F 8の整除性
     (イ)末尾の3桁が、000か8の倍数であれば、全体の数は8の倍数である。
     (ロ)偶数で、下3桁を2で2回割っても偶数でれば、8の倍数である。
     (ハ)百位が偶数のときは、下2桁が8で割る。
        百位が奇数のときは、下2桁に20を加減して8で割る。
     (ニ)1×(一位の数))+2×(十位の数)+4×(百位の数)が8で割り切れれば、全体の数は8の倍数である。
   G 9の整除性
     その数の単一数が9となれば、9の倍数である。

17. ÷3001,÷999 (被除数に、商が隠れている)
   例1   1,941,647÷3,001= 647
   例2   4,184,523÷8,001=523
   例3   168,831÷999=(1000−831)=169(831の補数)
   例4   998,001÷999=(1000−001)=999(001の補数)

18.1÷0.98の計算
   1−0.98=0.02 なので、
  ソロバンでの計算方法
   1+0.02(1×2=2)=1.02
   1.02+0.0004(2×2=4)=1.0204
   1.0204+0.000008(4×2)=1.020408
   1.020408+0.00000016(8×2)=1.02040816
   
19.999×999=   (カラス算)
   999×999=998001
999×(1000−1)と考えて、ソロバンの6けた目(十万の位)から、
   999と布数すると、999000となって、そこから 999を引いて
999000−999=998001を得る。

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写算・籌算・筆算

写算について

 筆算のことを中国では「写算」または「鋪地錦(ほじきん)」といい、朝鮮では「文算」といった。これは、「格子掛算」のことである。それがネピア・ロッドとかネピア・ボーンとかいわれるイギリスの「棒計算術」につながり、『暦算全書』では、「籌算」となった。
 アラビア数字による「筆算」にたどり着くまで、大変な時間と苦労があったのである。
 アラビア数字の伝播について考え、その後筆算につなげたい。

T.数字の変遷
 現在インド・アラビア数字が、世界を席巻している。世界の言葉の雑居状態にあるわが国では、インド数字のほかに、漢数字はもちろん今でもローマ数字もつかわれている。

1.古代エジプト(前5000〜前2000)
 エジプト王国の文字は、時代によって変わる。
(1)ヒエログリフ(神聖文字)
    古代エジプト王国の初期から約3000年間使用された。
    象形文字・絵文字で数字は完全な十進法である。古代文字の中で最初に解読された。記数法は単純で分かりやすいが記録に手間がかかる。
(2)ヒエラティック(神官文字)
    記録を必要とするのは、神官や役人であるから、簡便な記録しやすい文字や数字を工夫して使うようになった。その書体をいう。

2.バビロニア(前3000〜前539)
 古代文明はオリエントで栄えた。字画が楔(くさび)の形をしているから「楔形(くさびがた・せっけい)文字」といわれる。初期は縦書き、のち左から右への横書き。数字は十進法と六十進法で表される。

3.ギリシァ(前9世紀〜前6世紀末)
 (1)アッティカ方式
    原則として十進法をとっており、1から4までは、1を表す縦の棒線を並べた個数で五はГで示し、十△・百H・千X・万Mなど各位に単位を表す数詞の頭文字(頭音書法)で表す。
 (2)イオニア方式
    ギリシァのアルファベット24文字の小文字と、古文字3個を加た27文字を一つずつ数字にあてはめる方式である。

4.ローマ(前6世紀〜15,6世紀)
 ギリシァ数字(アッティカ方式)の影響を受けている。
 基本的には、十進法であるが、一、五、十、五十、百、五百、千などの数字が決められていて、それらを組み合わせて表示する。
 同じ数記号を並べるのは3個までとするのが慣例となっている。

5.インド(前2300〜)
 インド数字の起源はわからない。古い時代はいろいろな数字があったようである。紀元前後の頃には、1〜9と10、100、1000などを表す記号があったが、ゼロはなかった。0(ゼロ)が発明されたのは9世紀の後半になってからである。(876年の碑文がある)

6.中国(前12世紀〜)
 前12世紀初めの殷末から歴史時代に入り、周から清までの諸王朝を経て現在につながっている。文字はそれ以前から自然発生して、殷時代にはすでに用いられていた。わが国には6世紀頃伝わった。


U.数字の発生と筆算の沿革  〔『数字の発生』(ジョルジュ・イフラー著 彌永みち代他訳)より〕

 わが国にインド数字が正式に伝来したのは幕末のころで、まだわずか150年前のことである。
 因みに命位数が伝来して1000年以上遅れて数字が伝来したのであるが、どちらもインド生まれであることに不思議な因縁を感じる。

前2700          シュメールの楔形文字数字が出現 
前2600〜前2500      エジプト神官文字の数字が出現
前2千年代前半      アッシリア−バビロニア楔形文字記数法の近東一帯への伝播
前14世紀末        中国最古の数字が出現
前8世紀末        アラムの記数法最古の資料
前6世紀末        フェニキアの記数法最古の資料
前5世紀         アッテカで“頭音書法”によるギリシアの記数法が出現

前4世紀末〜前3世紀初頭  エジプトに“アルファベット”による、ギリシァの記数法最初の文献

前3世紀中期        バビロンの学者間に史上初のゼロが出現

前2世紀         “方形ヘブライ文字”の最初の文献「ナーナー・ガード洞の仏教碑文に、ブラーフミー数字のより完全な形が出現」
この数字は現代の9個の数字=インド・アラビア・ヨーロッパの数字を真に予告するものであるが、まだ位取り原理には従っていない。

前2世紀〜後2世紀    中国文字の改革。小篆文字(徐々に現代の字形に変遷していき、算木方式による位取り十進法の記述法《ゼロはない》)出現

718           「開元占経」百二十巻(中国でインドの『九執暦法』を漢訳)このとき、インド数字が伝わった形跡がある。

976           「インド・アラビア数字」のヨーロッパ輸入。最古の記録は、北イスパニアのアルベルト僧院から出現。《ゼロの記号はない》

1299           フィレンツェの銀行家たちがアラビア数字の使用禁止

1450           グーテンベルク「活版印刷」発明 『字形が安定した』

1457〜96         暦には「ローマ数字」を使用
             『ドイツは新数字の採用を強く拒否した』

1518           ケペルの暦も「ローマ数字」を使用

1582           マテオ・リッチ(利瑪竇)がマカオに到着
1596           「コンテムツス・ムンジ」刊行
1607           「幾何原本」(利瑪竇口述・徐光啓記録)刊行
1614           「同文算指」(利瑪竇口述・李之藻記録)刊行
1723           「暦算全書」(梅文鼎著)刊行
1785           「版籌」(乳井貢著)刊行
1788           「蘭学階梯」二巻 刊行(『数量』の章にアラビア数字掲載)
1798           「暦象新書」刊行(+−×:(÷))西洋数学の直接輸入
1857           「西算速知」(福田理軒著)刊行
1857           「洋算用法」(柳河春三著)刊行


V.計算方法の推移
1202年   『算盤の書』(Liber abaci)レオナルド・フィボナッチ著
ヨーロッパにおけるインド数字採用の第一歩、「インドの九つの数字は、9,8,7,6,5,4,3,2,1である。これらの九つの数字と、アラビアではzephirumと呼ばれる記号ゼロ(0)とをもって、どんな数でもあらわされる。」
 これは、フィボナッチがインド数字の意義を完全に理解していた証拠で、この数字を使って計算方法や商業数学を解説している。 

14世紀   ギリシャの僧侶マキシム・プラムデスがインドで著した『算術書』で「格子掛算」と呼ばれている。≪内山昭著『計算機歴史物語』≫

1403〜1424年 『七政推歩』 貝琳編
 当時イスラム国家では、すでにインドの土盤算を筆算に改良していたが、依然としてこの種の算法を「土盤算」と称していた。「去土盤訳為漢算」とあるから「漢算」ともよばれていたらしい。≪銭宝j編『中国数学史』≫ 

1427年   『算術の鍵』アル・カーシー著で、紹介している。

1450年   『九章詳註比類算法大全』 呉敬著 「写算鋪地錦為奇 不用算盤而知数」

1450年頃  『万書萃宝』『万宝全書』『博聞勝覧全書』などの百科全書に「鋪地錦」として掲載している。

1478年   イタリア北西部の町トレヴィソで、印刷された『算術書』(最初の活版印刷
よる算書)に他の方法とともにこれを「ゲロシャ法(Gelosia)」として説明されている。“Gelosia”という言葉の本来の意味は“嫉妬”であり、格子の型は、当時ヴェネチアの窓に用いられたもので、家の中にいる婦人や尼僧が街路から見えないように置かれたものである。≪カジョリ『初等数学史』下≫
(イー・ヤー・デップマン著『算数の文化史』では、「格子状シャッター」の意味とある)

1494年    『算術集成』イタリアのルスカ・パチオリ著(世界最古の複式簿記として有名)にも『トレヴィソ算術』の図が転載されている。 

1573年   『盤珠算法』 著者不詳 「鋪地錦:不用算盤而因乗見総」

1592年   『算法統宗』巻十七・程大位著には、「写算即鋪地錦」とある。

1617年   ジョン・ネピア『棒計算術』で、世界最古の乗除算用具の使用法について述べている。ネピア・ロッド(Napier rods)またはネピア・ボーン(Napier bones)と呼ばれた。(1642年 B・パスカル:機械式加算機を発明、1673年G・W・ライプニッツ:加減乗除の可能な計算機を製作)

1678年   『暦算全書(籌算)』梅文鼎著 「籌算」という呼び名は、「籌」が算木を意味するため誤解されやすいが、前記のネピア・ロッドすなわち「格子掛算」である。中国式の独特な形に改めて、縦線を横線に変え、位を区別するために用いられた斜線を半円に置き換えた。

1693年   『暦算全書(筆算)』 梅文鼎著 詳細については別項で。

17世紀末   『九数略』(朝鮮)崔錫鼎著 甲乙丙丁四巻、丁巻の附録で、「文算、俗称写算、一名鋪地錦」と紹介している。  

1701年    『古今算法重宝記』 鈴木重次著 九九表を縦横9行の格子の目で記している。

1723年   『籌算式』 有沢致貞著
1725年   『算法指要』 有沢致貞著
1764年   『牙籌譜』 山県昌貞著 
1767年   『籌算指南』 千野乾弘著 
1768年   『籌算開平立方法』 千野乾弘著
1770年   『捷径算法』 千野乾弘著 
1785年   『版籌』 乳井貢著 日本で最初の筆算を説いている。
1804年   『筆算』 石黒信由著 「写算」である。
1826年   『帰乗法捷』 鶴峯戊甲著
1841年   『算学必究』 奥村贈㋑著
1855年   『籌式便覧』(帰乗法捷を改題)鶴峯戊甲著
 ?    『籌算』中川淳菴著
 ?    『紅毛算法(オランダ算法・算籌全書)』 著者不詳 
1867年   『西算速知』 福田理軒著 日本で最初の「格子掛算」を用いて「西算」によるを説明している。
1867年   『洋算用法』 柳河春三 アラビア数字を用いたわが国最初の文献である。

1890年頃   フランスの土木技師ジュナイユ(Henry Genaille)が「計算棒」(加算不要で n桁×1桁 の答が求められる)を考案した。≪別冊サイエンス『数学ゲームU』マーチン・ガードナー著 赤攝也・赤冬子訳 ’98≫
 
 上記の外に、≪中華珠算大全≫によれば、「籌碼算盤」として、「在使用籌碼的后期、有了籌碼算盤。一説:到了六朝(420〜577年)末年、才把這種籌碼算盤、改成現在的珠算盤。別説:由于這種算盤在運算上的不便、后被珠算盤所取代。」との説明があり、図入りで記されている。
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珠算と暗算

珠算式暗算の一考察
村 上 耕 一

1.数字の発生
  「人類の歴史の大半を通じて,計算はほとんど必要ではなかった」と『コンピュータを創った天才たち』で著者ジョエル・シャーキンがいう.
  原始生活において,その活動範囲が広がり,生活の事象を記憶のみに頼ることができなくなって,記録を必要とするようになった.そこで生まれたのが文字であり,数字である.
  人類が誕生して180万年とも言われるが,人類が文字を持ってからせいぜい5000年程度(シュメール文字:前3300年,エジプト象形文字:前2500年)である.
  文明の発達に応じてようやく計算が必要となり,その計算が複雑化してくることによって,計算の補助手段としてソロバンの原型が誕生することになった.

2.「珠算」の誕生
  「『算盤』(αβακιον)という言葉が始めて文献に現れるのは,恐らくLysias(Bc.458~378)の著作においてであろう.≪吉田 隆≫」ということである.
  一方,中国において,「珠算」という語が出ている最初の文献は,漢末(2世紀ごろ)の徐岳が撰し,北周(6世紀ごろ)の甄鸞(ケンラン)が註釈を加えた『数術記遺』であるといわれる.
  この書には,十四の計算方法があげられていて,十三番目に「珠算」が記されている.
甄鸞の註釈から想像すると「全体は箱型で,横に三つに区切り,上段は五珠・下段は一珠の未使用珠の待機場所である.五珠と一珠とは色分けしてあり,中段は縦に何桁かに区切ってあって,1桁に9(五珠1つと一珠4つ)までの珠を入れて計算する場所である.待機している珠を「游珠」といっているところから,このソロバンを通称「游珠算盤」と呼ばれているが,原理は「四つ玉ソロバン」である.
  宋(960〜1279)元(1271〜1368)時代になると,商業が盛んになり『算学啓蒙』(朱世傑著・1299年)の出題問題に多くみられるように,1斤=16両とする「斤両法」の計算が必要になった.因みに,1斤が16両というのは,四季の4と四方の4を掛け合わせた数をあらわしているという.≪薮内清著『漢書・律暦志』≫
  それまでの計算用具としての籌(算木)を,利便性から固定化するとき,珠に軸を通して16進数に適応させ,1桁に1〜15の数表示ができるように「天二地五のソロバン」が生まれたのである.

3.日本のソロバンの推移
  このソロバンがわが国に伝わったのは,いつ頃か今もってわからない.ただ幾つかの史料からみて,16世紀中葉であろうと推測されている.
  その後,江戸時代を通して(一部を除いて)改良はなされず,伝来の姿そのままの「天二地五」であったが,明治になってようやく天珠を一顆減らして「天一地五」のいわゆる「五つ玉ソロバン」に変身したのである.
  しかし,十進数に合わせながらも「五つ玉ソロバン」は,1桁に十までの表示ができるため,十の表し方が2種類(百は3種類,千は4種類……)あるのである.
  それでも,当時の割算は「割り声」を使った『帰除法』であったので,五つ目の珠(底珠という)を利用することもあった.
  昭和になって,当時の文部省は「インド・アラビア記数法」と一致することを最大の理由として,『尋常小学算術』第四学年児童用下の教科書(昭和13年・いわゆる緑表紙)の編纂にあたり「四つ玉ソロバン」を推奨した. 
  珠算界としては,この変革にあたって相当の議論を重ねた結果,徐々に受け入れて「四つ玉」に移行していった.割算が『帰除法』から『商除法』に切り替えられたのもその頃で,昭和二十年代末のことである.
  端的にいえば,ソロバンはこのように「中国で,四つ玉に生まれ.約二千年の時を経て,日本という外国で,もとの四つ玉に回帰した」のである.

4.わが国でソロバンが普及した理由
  このような諸改革(形体面・技術面)が,今日の珠算と珠算式暗算の発展に大きく結びついたのであるが,日本でソロバンが普及した理由や珠算の優位性などを考察したい.
(1)「九九」があった
   奈良時代に伝わった掛算の九九は,知識層はもちろん広く庶民にまで普及していた.これは成り立ちが簡単で,言語上からも憶えやすく,リズミカルで唱え易かった.
(2)文字としての数表現
   漢数字は記録数字であったために,記録してそのまま計算をするには困難をきたしたので何らかの計算用具に頼らざるを得なかった.
   しかし,幸いにも中国から移入したこの数表現が十進法であり,基数字(一から九まで)と位格命数(十百千万億など)で成り立っていたことは,アラビア数字へ移行が比較的容易であった.
   もし,ギリシアでの10=ι・20=κ・30=λ・40=μ・50=ν・60=ξ・70=ο・80=π・90=ρ・500=φ,ローマ数字の50=L・500=D などのような文字が中国にあったら,すんなりとは受け入れられなかったかも知れない.
(3)言語としての数表現
   日本の数の唱え方は,上位から下位へ位格ごとに一桁ずつ唱える直接法であった.英語では,例えば十三を3+10(thir・teen),三十は3×10(thir・ty).十九は9+10(nine・teen),九十を9×10(nine・ty)と唱える.
(4)軽便であった
   日本人は,携帯に便利なように小型化したり,軽くしたりするのが得意なので,ソロバンの製作に職人の技術と勘を生かすことができた.
(5)日本人の特性に合致した
   @ 農耕民族の特徴として,手先が器用である.
   A 「せっかち」「完全主義」の性格が 改良工夫につながった.(鉄砲・時計など)
   B 右利きが多いことが,ソロバンの運算に適していた.
   C 右手を使うと,左脳を刺激して数的能力の向上に有効である.
   D ソロバンへの布数が,アラビア数字の位取り表記と一致していた.
(6)識字率が高かった
   すでに漢字を咀嚼していたので,情報源が中国であった当時としては,バイリンガルであった.その上,漢字(真名)から片仮名・平仮名を発明したことにより,低年齢でも書物が読めて,文章表現も可能であった.
(7)ソロバンと数学の伝来時期が合致した
   信長の「楽市・楽座」の設置により,領国を越えた商業の発達が迅速な数処理を必要とした時期であり.その後の全国統一により納税などの計算が頻繁に行われた.
   そこへ伝わった数学の内容が,当時の日本人のレベルより少し高度であったが,十分理解できる程度であった.
(8)操作と数表示が効果的であった
   @ 珠が回ることにより操作をスムーズにした.(ローマソロバンの珠は回らない)
   A 「ご破算」を,天珠を上げる動作で行う.(ローマソロバンでは、上下全部の珠を下げることでゼロを表した)
   B 明治以降,改良を加えた.
    *珠の大きさを指に合致させた.
    *構造をシンプルにした.(天珠を1顆に地珠を4顆にした)
 

5.珠算式暗算について
(1)珠算式暗算の優位性
  @ アラビア数字の十進位取りに合致する。
  A 2桁・3桁10口以上の数の加減はもちろん,2桁×2桁以上の掛算が,正確・迅速に計算できる.(これは珠算式暗算のほかには,考えられない)
  B 0がハッキリ認識できる.
(2) 珠算式暗算の実体
  暗算については,心理学・大脳生理学の先生方が種々調査研究しておられる.
しかし、珠算式暗算は「脳裏にソロバン珠の像を画いて計算するのである」については、元徳島大学教授 小田信夫¹氏のつぎの説が最も的確と思われるので,掲げてみたい.「…略…珠算家の中には,この像を残像²(after image)といっている人がある.いかにも,現実に生き生きと感覚される像である点において残像に似ている.だが,像の大きさや投写の位置が一定していて,残像の法則たる『エムメルトの法則³(Emmert’s Law)』に従わないし,また,残像は外界刺激が停止した直後に経験される現象であるのに,この像は,いつでも意のままに構成されるので,これを残像ということはできない.
  また、この像を表象像⁴(presentation)であると考えている人もある.たしかに,主観的に自由に写像することができ,その大きさについても,エムメルトの法則に従わない点など表象的特質はもっている.だが,さきに述べたように,生き生きとして体験せられ,残像に近似した特質を有する点において,普通の表象像とは区別されねばならない.
  すなわち,この像は,残像のごとくいきいきと感覚される像であると同時に,表象像のごとく主観的構成の性格を担っており,これらと同様,一種の記憶像(memory image)であり,いわゆる直観像(eidetic image)である.直観像素質は,9〜14歳にもっともあらわれ易いとされている.…略…」
≪雑誌教育科学・算数教育『暗算と筆算』明治図書出版≫
註1.小田 信夫(おだ のぶお)
  元徳島大学教授 教育心理学専攻 昭和58年7月3日逝去(83歳)   岡山県出身 東京文理大(現筑波大)卒 滋賀師範教授を経て24  年徳島師範(現徳島大)教育学部教授 40年退官 わが国で最初  に死後再審が確定した「徳島ラジオ商事件」に疑問を持ち 科学  者の立場から無実を追求したことでも有名.
註2.残像(after image)
  外部からの刺激が消えても感覚に残っている像のこと.残感覚.  主として視覚についていう.例えば,夕陽などを見つめた後に起  こる感覚現象.
註3.エムメルトの法則(Emmert’s Law)
  残像の大きさは,それが投影される面までの距離によって,はな  はだしい影響をうけるもので,距離に比例して増減する.
註4.表象像(presentation)
  知覚に基づいて意識に現れる外的対象の像.対象が現前している場合=りんごを見たとき(知覚表象),記憶によって再生される場合=りんごを思いだしたとき(記憶表象),想像による場合=何かを空想したとき(想像表象)がある.感覚的・具体的な点で概念や理念と区別される.
註5.直感像(eidetic image)
一度見たことのある風景や事物が,再びほとんどそのままハッキリと認知される現象.また,その心像.幼児や未開人に多くみられる.


6.珠算式暗算を可能にした要件
 (1)「数図」
   古来多くの数学教育学者が,数の認識の補助手段として,いろいろな数図を考えた.
  サイコロの目のような表し方で数を表示した図で,
   例えば ・ ‥ … ‥‥ とか ・ : ∴ :: などである.
   @ 各数の区別を,明瞭にすることができる.
   A その形象を心像として把握させて,明瞭な数観念を形づくらせる.
   B さらに,これらに基づいて,計算の基本原理を内在的に直観させることができる.
   いくつかの数図をみても,1から4までは,どのように配置しても,容易に数を認識することができるが,5になるとどのように工夫しても,難しいので,一般的には,数を瞬時に認識できる限界は4であるといわれている.
   学者によれば「動物が識別することのできる数は,3ないし4で,人間も他の動物と変わったところはない」ということである.
また,シュメール数字もローマ数字もその表記方法をみると「同じ数記号を並べるのは,3個までである」という.ここでは限界を3としている.
   ソロバン数図は,数認識の限界を4として,五玉は形としてではなくて「ある・ない」の区別によって,1桁の数を認識するという理想的な数図といえるのである.                
 (2)一玉については,心理学の「知覚」でいう『近接の要因』に添っている.
  知覚の形態化が成立の条件  ≪西川好夫著『図説心理学入門≫ 
@.近接の要因 A.類似の要因 B.良い形の要因 がある.        
    ◎ 近接の要因                              
    他の条件が同じならば,近接しているものは,まとめて知覚される傾向が大きい.
 A図 ⇒    |  ||  ||  ||  ||  |
          イ   イ ロ   ロ ハ  ハ ニ  ニ ホ  ホ
 B図 ⇒     ・   ・ ・   ・ ・    ・ ・     ・ ・  ・
    上のA図の線やB図の点を見たとき,イとイ、ロとロ、ハとハ、ニとニ、ホとホが一つのグループであるのに,近接しているイとロ、つぎのロとハなどの線や点が一つのグループとして見える.

◎ 数学の歴史書で「ローマの溝ソロバン」を目にすることがあるが,大英博物館所蔵ソロバンの写真掲載が多く,仄聞するところによると,大英博物館ではレプリカだということで,処分したとのことである.現存するものとしては,ローマ国立博物館・パリ国立図書館・ドイツ博物館所蔵などが挙げられるが,確実に見ることができるのは,パリの国立図書館である.
   「ローマ式溝ソロバン」の構造は,上の玉1つ・下の玉4つで,今広く使われている「四つ玉ソロバン」にそっくりなので,これを見るとなんとなくうれしくなって安心する.ところが,その操作方法は根本のところで異なるのである.
    @「ご破算」は,五玉も一玉も全部下げた状態で「0」を表す.
    A「布数」は,上がっている玉で数を表すのである.
     例えば,8を布数する場合.
ローマでは,上の玉一つと下の玉三つを動かして表示するのであるが,上の玉と下の玉が離れているのである.(このような例は,韓国の『九数略』に一件,目にするのみである.)
日本では,ゴハサンをして全部の玉を梁から離して0とし,上の玉をさげて下玉を三つあげて表示するので,当然ではあるが,上の一つと下の三つをくっつけて表示される.
   このことは,「近接の要因」からみて大変重要なことと私は考える.
   もし,日本のソロバンもローマのような布数法であれば,操作がスムーズにできないばかりではなく,おそらく珠算式暗算の習得は困難で,現在のようにひろく普及することはなかったであろう.
(3)「ソロバン玉」という具体的対象がある.
   ソロバンという具体的な対象物を媒体としての「ソロバン数図」に裏打ちされているので,脳裏に写像しやすい.特に,現在一般に使用されているソロバンと同条件であることが重要である.
  @ 日本のソロバンの玉が,菱形であるので一玉の数の区分がつきやすい.
  A 玉の色彩が,一般に柘植(つげ)玉の黄色,または樺玉の明るい茶色であることによって写像がしやすい.
  B 玉の大きさも、暗算の桁幅に影響が考えられる。

以上.種々の角度から日本の「ソロバン」と「珠算式暗算」の優位性について考察を加えてみたが,珠算人の視点ということで我田引水の感があると思うので、ご批評ください
posted by そろまんが at 14:50| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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